近況 金魚との夏
7月15日に近所のホームセンターで購入したオランダ獅子頭。すっかり元気になり、60センチ水槽をスイスイと泳ぎ回っている。物怖じしない性格で餌もよく食べ、威張りもせず、いじめられもしない。心配していた先住金魚たちとの相性も悪くなさそうだ。
ドキリとするほど赤かった体の色は、保護色機能が働いてか優しいオレンジに落ち着いた。色揚げ成分の入った餌(キョーリンのプロリア色揚げ)を与えてはいるが、バックスクリーンも貼らず、室内での飼育なのでこんなものだろうなと思う。健康でさえいてくれればそれでいい。
6月に水槽に入れたマツモは、この子たちに食べつくされそうになり、まだ葉が残っていたものを慌てて川魚飼育水槽に移した。始め金魚たちは水草に関心を示さなかったので、「うちの金魚たちは水草を食べない」と安心していたのだが、ある日突然、ものすごい勢いで食べ始めた。マツモが無くなってからは、アナカリスの硬い葉をブチブチと食いちぎり、鮮やかなグリーンのフンをモリモリしている。
元気があってよろしい。が、ほどほどにしてもらえると助かる。
明日も元気に過ごしておくれよ、金魚たち。
ちなみに、日曜にまたホームセンターへ行き、半額で売られていた観葉植物を買ってきた。パキラとコーヒーの木だ。コーヒーの木の苗4本のうち2本を、根の土をよく洗い落としてから水槽に生けてみた。1,2週間すると水耕栽培に適した新しい根が生えてくるらしい。水槽の硝酸塩を吸って育ってくれたらいいのだが…。
夏の出会い ―オランダ獅子頭―
新しい出会いがあった。
とはいえ相手は妖艶なお姉さんでもダンディなおじ様でもない。
一匹の金魚だ。
梅雨明けの前日、夕方5時のチャイムを聞きながら 曇り空の下自転車を走らせた。田舎なので高校を卒業した人間は皆自転車を卒業し、代わりにブイブイと車を運転する。みんな自転車の良さを忘れてしまったのか。ガソリンも食わないし健康にもいいぞ。
駅前ですれ違う学生たちの夏服のまぶしさたるや。
自転車を漕ぐこと15分。ホームセンターにたどり着く。
庭の睡蓮鉢に浮かべるホテイアオイを購入するつもりでいた。…が、ホテイアオイと一緒になにやら赤いものがプカプカとひっくり返って浮いている。
見ると体を白点で覆われた小赤たちだった。
なんと悲惨な…。
こんな病気の蔓延した鉢のホテイアオイを購入して、家のメダカたちが病気をもらってしまっては大変。ホテイアオイは別の店で買うことにした。せっかくなので店内を少しブラつく。
夏の観賞魚コーナーは楽しい。
沢山の種類の水草がカップに入れられ、小さなボトルに入れられた色とりどりのベタたちが不機嫌そうにこちらを見ている。白いウーパールーパーなんかもいた。
残念ながら金魚水槽はどれも病気だらけ。プカプカ浮いて死んでいるものも少なくなかった。全ての水槽に「調整中」と張り紙をしたくなる。この店はいつもこうだ。魚の管理が良くない。
…と、そこで一匹の金魚と目が合った、気がした。
違う。一方的に私が一目ぼれした。
…赤いオランダ獅子頭。
私は少し悩んだ。家の金魚たちはすべてフナ尾だ。新しく金魚を迎えるなら同じくフナ尾の金魚がいいと思っていた。(できればキャリコ玉サバが欲しいと思っていた)
金魚同士の相性を考えることは大切だと思う。
だが、すでに元気いっぱいとは言えないこの金魚。同じ水槽の他のオランダたちも動きが弱々しい。運よく他の誰かがこの店から連れ帰り、大切に育ててくれたらそれが一番いい。だが、そんなことは今の私には分からない。こんなに可愛いこの子は…
気づけば店員呼び出しボタンを押していた。「観賞魚コーナー、お客様がお呼びです」アナウンスが流れる。一瞬頭をよぎる後悔と不安。
しばらくすると気のよさそうなおっちゃんがスタスタとやってきた。
「オランダ獅子頭を…一匹…」
「一匹ね」
「この子で…」
おっちゃんが大きな網で器用に金魚をすくい、袋に酸素を入れてくれる。
私はあわててレジへと向かった。ちなみに金魚は税込み638円だった。
帰宅後すぐに空の水槽に、すでに立ち上がっている水槽の水を半分ほど入れ、水温を合わせカルキを抜いた水をもう半分入れた。水量を確認し、0.5パーセントの濃度になるよう食塩を溶かす。おまじないとして自家製PSBも入れておいた。
時間をかけて水合わせをして、金魚を水槽へ。
(ちなみに、袋に入っていたホームセンターの水は水槽に入れずにすべて捨ててしまった
が、捨てる前に一度試験紙で水質を検査してみれば良かったと後悔している。あのホームセンターで病気が大発生している理由が気になる…)
一夜明けて、まだ万全とは言えない感じではあるが、水槽内をゆっくりと泳ぐ姿にとりあえず安堵した。(子どもの頃は知識不足で、金魚を連れ帰った翌朝に死んでしまっていることが多かった)
とぼけたような正面顔が可愛らしい。
オランダ獅子頭を飼うのは初めてだが、フンタンがあるせいか犬のような愛嬌を感じる。
よく見ると右側の尾びれに癖があったりするので、選別漏れしてホームセンターへ来たのかもしれない。しかし一般家庭で飼うなら何の問題もない。少し欠点があるぐらいの方が、より愛着も増す。
少々長すぎるかな、という感じのボディも、内臓に負担がかからず、転覆しにくいという点から見ればむしろ長所だ。
病気が蔓延している店から連れ帰ったので、少なくとも2週間以上は隔離して様子をみるつもり。
結局のところ、可愛そうに思って連れ帰ったわけではないのだ。可愛そうだなんて思うのはむしろ失礼かもしれない。私が自分の毎日に彩りを加えたくて、可愛いく美しいこの子をさらって来てしまった。
ペットを迎えるのには勢いが必要だ。…もちろん現実問題を考えず勢いだけで生きものを購入することは良くはないのだけれど。
少しの後悔と、それより大きな愛情で、新しい生活を始めてみよう。